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それどころか待ち合わせ時間を一方的に発信したっきり、部長からのアクションは無いまま。返信の催促すらせず、だ。約束の場所にやって来ない可能性まである。
部長が来なかったら? 正直を言えば来ない方がホッとするかも。窓に映る私は普段通りの服装でオシャレはしていない。
そして、あと二駅あたりで誰かが隣へ腰掛けてきた。他に空席があるのにと不思議に思うより早く、キーホルダーへ触れられた。
「一緒の電車だったんだな」
「部長……来たんですか?」
「来たんですかって何? 約束したんだ、当たり前でしょう?」
昨晩のやりとりで約束を交わしたと言えるかは置いといて、私服姿の部長に見入る。
「そんなにジッと見ないで。穴が開く」
「いや、なんか新鮮でつい。ジーンズ履くんですね。それからダッフルコートもイメージになくて」
カジュアルな装いは部長を若くした。
「君は普段通りだな」
部長に悪気はない、私は確かに普段通りだ。
「オシャレをすると部長が嫌がると思いまして、遠慮しました」
強がりを放ち、顔を背ける。
「せっかくの思い出つぐりなんだ。拗ねるのは無しにしないか?」
部長はキーホルダーを撫で続けて、ぽつりと溢す。
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