社内恋愛を始めたところ、腹黒上司が激甘彼氏になりまして

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 思い出づくりーー随分含みのある言い回しで引っ掛かる。しかし意図を尋ねても部長は答えないだろう。物を必要以上に弄る時、部長はいつも迷っているから。 「お昼はどうしましょうか? 軽く食べます? それともフレンチトーストを食べに行きましょうか?」  駅前にフレンチトーストが美味しいカフェがあり、部長の好物なのだ。部長はこう見えて甘い物に目がない。 「食事は買い物の後でいい。目当ての品が売り切れたら大変だ」  私が拗ねるのをやめると部長もキーホルダーから手を離す。ついでに座り直した。密着していた太腿がほんのり温かい。 「店内はかなり混雑していると思うので、部長は外で待っていてくれて構いませんよ」 「それだと買い物に付き合っていると言えなくない? 僕も入店する」 「ですが、人混みは苦手って」 「いいんだ、今日は特別だから」  私服効果なのか、部長の笑みが柔らかい。険がなく少年っぽくもあり、つられて微笑むとますます穏やかに目尻へシワを寄せていく。 「この間、ハロウィンだなと思ったが、もうクリスマスなのか」  部長も街の様子に同じ感想を言う。別々の部署で働いていても、体感時間が一緒と感じられれば寂しくない。 「そうですね、一年があっと言う間です」 「確かに」 「って毎年、一年は早いとか言ってません? 私、来年も言いそうです」 「……あぁ、そうかも、な」  クリスマスの話を部長とするのは気まずいけれど、あれからポーカーフェイスで相槌を打てるくらいの歳月を経てもいた。  きっと部長は例のクリスマスのことなど覚えてないが、それでいい。
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