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それから熾烈な『ねぇかわ』グッズの争奪戦に参戦し、戦利品を抱えてカフェへやってきた。
「ーーっ、ぷっ」
部長は物理的に人に揉まれた経験など無かったのであろう。若干、放心状態でグラスを持つ。
いつものスマートで完璧と掛け離れたヨレヨレな姿を笑ってはいけない、そう噛み締めるも堪え切れない。
「ぷ、くくっーー」
「ねぇ、いっそ大声で笑ってくれた方が清々しいよ」
「っ、でも、ふふっ」
はしたなくテーブルまで揺らしてしまう。
「いいさ、好きなだけ笑いなさい」
今日は午前中のうちにフレンチトーストは完売したそう。代わりにチーズケーキを注文したが口に合わないのか、部長の手は進んでいなかった。
「ほら、あまり食いしばると唇に傷がつくぞ。君をこんなにも笑顔に出来たなら本望だ。次に君が落ち込んだ時は満員電車にでも乗るか?」
部長は頬杖をつき、肩を震わす私を眺める。
「え、まさか私を励まそうとポップアップストアへ連れて行ってくれたんです?」
「そのつもりだけど? 一体なんだと思ってた?」
「息抜きと書いてあったので」
この返しに部長がハッとし、首を横に振った。
「励ましてやるから出掛けようって誘う程、僕を恩着せがましい男と思ってるの?」
「恩着せがましいなんてとんでもない! 部長はどちらかと言えばドライで、私に同情しないと思ってました」
「同情はしないが心配はするさ、だって君はーー部下だったんだ。はぁ、もういい、それで? 欲しかった商品は買えた?」
「あっ、はい! お陰様で全部入手出来ましたよ! 見ます?」
「いや、いい」
私は大きな紙袋を探り、購入品の紹介を始めようところ、ストップがかかる。他の席からも『ねぇかわ』の話題が聞こえるので場違いにはならないはずだけど。
部長用を一つ用意してあり、励まそうとしてくれたお礼で是非渡したい。
「それより君に言いたいことがある」
山猫グッズを見て貰えないのは残念なものの、話があるそうなので姿勢を正す。
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