社内恋愛を始めたところ、腹黒上司が激甘彼氏になりまして

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■ 「松下部長がーー結婚?」  そのニュースを聞いた瞬間、私は手元の資料を落としてしまった。 「あの部長もついに身を固めるらしいな。逆玉の輿みたいだぞ」 「逆玉の輿?」 「なんでも相手は取引先のご令嬢で、ゆくゆくは部長が会社を継ぐらしい。岡崎にしてみたらチャンスじゃないか」 「え?」 「部長のポジションが空くだろ?」  この際、同僚の嫌味などどうでもいい。無視を決め込んで資料を拾うと、そのまま朝霧部長のデスクへ移動する。  彼は私の顔を見るなり襟足を掻く。いかにも気まずそう。 「松下部長の件なら俺もよく分かりません」 「分かりませんとは? 松下部長が退社されたら我社の損失がどれだけ大きいか、お分かりになりますよね?」  両手をデスクにつき、聞き返す。  取引先相手との縁談ならば上層部が知らないはずがない。一枚、いやニ枚も三枚も噛んでいるに違いなかった。  その証拠に社内に情報が拡散されるのが早すぎる。外堀を埋めて松下部長を逃さないつもりか。 「と言われても……プライベートな話ですし、幸せと仕事を天秤にかけるのはナンセンス。松下部長も今すぐ辞めたりしないと思いますし。それよりコンペの進み具合は如何ですか?」 「それは松下部長が抜けた穴を埋められる出来栄えかと聞いてます?」 「あぁ、そういう意味として受け取って構いませんよ、岡崎君」
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