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部内の空気が張り詰める。先輩後輩の位置関係が今や部下と上司、周りも色々気を揉むだろう。
「不本意であるのは察します。しかし、岡崎君が今やるべきことは明確なはず。仕事に集中して下さい」
朝霧部長の言い分は正しい。松下部長の縁談話に気を取られている場合じゃなく、企画書を仕上げないといけない。
「申し訳ございませんでした。仕事へ戻ります」
両手を股につけて頭を下げる。すると周囲の緊張が解け、雰囲気は回復した。
私も朝霧部長もお互いの距離感をいまいち掴みきれていないだけで、いがみ合いたいんじゃないのだ。リスペクトを忘れず適切な関係を構築したい。
「……それで注意したばかりですが、少々頼まれてくれませんか?」
茶封筒を持ち出す朝霧部長。
「はい、構いませんよ。そちらをどなたにお渡しすれば?」
「第三会議室へ持っていって欲しいです」
「第三? あちらは使用禁止では?」
「そうなんですがーー行けば用件が分かると思います」
言い淀む朝霧部長は追求しないでおく。お使いを引き受けるのは皆へアピールになるし。
面白ろ可笑しく部長の結婚について噂してきた社員をちくりと睨み、部屋を後にした。
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