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松下部長が結婚ねーー廊下を歩きながら、どうしても考えてしまう。いよいよ年貢の納め時か、それとも取引先のご令嬢が運命の人だったとか。部長に結婚のイメージを持っていない、いや持ちたくない為、信じられず疑う。
だが、結婚を控えていたから私をポップアップストアへ連れて行き、企画書のアドバイスをしたのなら辻褄は合った。会社に残す元部下を案じて行動したのだ。
部長にはこれまでも数多の見合い話があったと推察する。それをのらりくらり避ける様子も容易に思い浮かぶ。
身を固めないことで何を言われても気にせず、部長は独身を謳歌し続けると思っていたのに。
なんだか裏切られた気分。
恋愛的な意味合いではないものの、私は彼に待っていて欲しい旨を伝えたはず。それなのに寿退社をしようとするなんて。
「失礼します」
使用禁止のはずの第三会議室から明かりが漏れていた。ノックをして扉を開けるとーー。
「やぁ、お疲れ様」
そこに松下部長がいた。軽く手を上げ挨拶してくる。まさか渦中の人物がこんな場所にいるとはーー私は瞬時に反応出来なかった。
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