魔女のTrick or Treat

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 ホントに、いいのかな。これで。  笑われたりしないかな……と不安になる。  はぁ、と思わず溜息をついたけれど、今日はもう29日。  もう一度取り寄せる時間もないし、お店に買いに行く勇気もない。  これで何とかするしかない――――。     31日。  今年はわたしにとっては運良く、彼はお客さんを訪問してから帰ることになり、わたしも少しの残業で済んで彼より先に帰ることが出来た。  試着の反省を踏まえて買って来た網タイツを穿いて。  帽子は被るけど、ちょっとでも上にボリュームを出して視線を上に……と髪も軽く巻いて。  何とか見苦しくないようにあれこれ努力をして、一応仕上がったところで彼が帰って来た。  鍵が開く音がして、玄関へ飛んで行く。 「ただいま――――」 「おかえりなさい。……あの、ハッピーハロウィン、……じゃなくて、トリックオアトリート!」  恥ずかしいのを堪えて必死に言うと、彼はきょとんとわたしを見る。  あれ。  ……もしかして、去年のも本当にたまたまで、全部わたしの勘違いだったら……。  さあっと血の気が引きそうになったけれど、何もなかったことにも出来ないので言い訳をする。 「……あの、去年、何もしないでお菓子だけもらっちゃったから、何かしようと思って……似合ってないかもしれないけど、いろいろ考えて、これ」  彼は、身を屈めてわたしの顔を覗き込む。 「……ごめんなさい。似合ってない?」
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