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「見て!」
太郎の弾んだ声にマリンは顔をあげた。しかしそこには相変わらず池があるだけだった。
「何も起きなかったじゃないの」
「見て、水の色が変わってきてる」
「え?」
黄色かった池の水が次第に透明度を増していく。今まで見えなかった水底があらわになってきた。
「中和されたのかもしれない」
そう言って太郎は落ちていた枝を池に投げ入れた。枝は波紋を描いただけで、そのまま水面に浮かんでいた。
「溶けない! きっと大丈夫だ!」
太郎は水に手を入れた。
「ダメよ、溶けちゃう!」
「大丈夫、溶けてないよ」
太郎は嬉しそうに水をすくって口に入れた。
「美味しい。甘くて美味しい」
マリンも恐る恐る池に手を入れた。普通の水だ。手は溶けなかったし何の匂いもしない。
「さあ脱出だ。また池の水が黄色に変わる前に渡り切ろう」
「うん!」
2人は手を繋ぎ池を歩いた。それほど深くなかったので難なく進めた。池の向こうには光が見えた。
「出口だ!」
水に濡れて重たくなった体をものともせず2人は走った。出口に向かって。
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