魔法発動?

4/4

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「見て!」  太郎の弾んだ声にマリンは顔をあげた。しかしそこには相変わらず池があるだけだった。 「何も起きなかったじゃないの」 「見て、水の色が変わってきてる」 「え?」  黄色かった池の水が次第に透明度を増していく。今まで見えなかった水底があらわになってきた。 「中和されたのかもしれない」  そう言って太郎は落ちていた枝を池に投げ入れた。枝は波紋を描いただけで、そのまま水面に浮かんでいた。 「溶けない! きっと大丈夫だ!」  太郎は水に手を入れた。 「ダメよ、溶けちゃう!」 「大丈夫、溶けてないよ」  太郎は嬉しそうに水をすくって口に入れた。 「美味しい。甘くて美味しい」  マリンも恐る恐る池に手を入れた。普通の水だ。手は溶けなかったし何の匂いもしない。 「さあ脱出だ。また池の水が黄色に変わる前に渡り切ろう」 「うん!」  2人は手を繋ぎ池を歩いた。それほど深くなかったので難なく進めた。池の向こうには光が見えた。 「出口だ!」  水に濡れて重たくなった体をものともせず2人は走った。出口に向かって。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加