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ゲームクリア
「これがタマサンゴだよ」
マリンはおばあちゃんの家の庭になっているタマサンゴを太郎に教えた。
「本当だ。丸くて赤い。魔法石みたいだね」
迷路を出ると神社の裏側だった。太郎に案内されてマリンは祖母の家へと帰って来た。
「マリン……!」
「おばあちゃん!」
祖母は持っていた網を投げ捨てマリンに走り寄り潰れてしまうかと思うくらい強く抱きしめた。
「マリン、マリン! 戻って来たのね! マリン!」
祖母の髪は白かった。もう赤くは見えない。マリンも力いっぱい祖母に抱きついた。
「ごめんなさい。ママがいけなかったのよ。夜中まで働いてマリンをひとりぼっちにしたから、だからゲームばかりやって目が赤くなってしまったのよね。でもそのせいで紅竜様の生け贄にされちゃって……ごめんなさい。もうママはずっとマリンと一緒にいるからね」
ママ? 祖母は自分の事をママと呼んだ。その時マリンは違和感に気付いた。祖母はマリンの事を「海ちゃん」と呼ぶ。決して「マリン」とは呼ばない。
「ママ……?」
「そうよ。ずっと待ってたの。仕事を辞めてこの村でずっとマリンを待ってたのよ」
母親は村で魚を捕って暮らしていた。アカメが捕れると神社に奉納し、「アカメを捧げますからマリンを返してください」とお願いをして暮らしてきた。
お供えとは別に、マリンがお腹を空かせては可哀想と、毎日おにぎりを神殿に置いていた。
「やっと紅竜様が許してくださった。ああ、良かった……」
華奢で細かった母親の指が、今は節くれだってゴツゴツしていた。
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