赤い月夜

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「今日は泊まってくんでしょ?」 「もう飲んじゃったから運転できないし」 「じゃあゆっくりできるわね。海ちゃんのお祝いだから色々用意してあるのよ」 「お祝いなら現金で良かったのに」 「何言ってるの。この村では無事に6歳を迎えられたらお祝いするのよ」 「またそんな事言ってる」  バカにしたようにため息をつき、母親はビールをあおった。 「ちゃんと働いてるの? 海ちゃんの面倒はみてるの?」 「当たり前でしょ。毎日夜中まで働いてヘトヘトよ」 「夜は海ちゃん1人にしてるの? 可哀想に」 「そんな事言ったって働かなきゃ生きていけないわよ」 「せめて昼の仕事にしたら? こんな小さい子どもを夜1人にしておくなんて」 「夜の方が稼げるのよ」 「う……ん……」 「海ちゃん」  母親と祖母の口論で目を覚ましたマリンは、目をこすりながらゆっくり起き上がった。 「おはよう……」  寝ぼけ眼の孫を見て祖母は言葉を失った。 「目……!」  マリンの目は真っ赤だった。まるで庭に実っているタマサンゴの実のように。 「なんてこと……海ちゃんが選ばれてしまったなんて……」 「は? 何が?」 「目が赤くなってしまったって事は、紅竜様に呼ばれてしまったって事よ」 「また! 龍なんているわけないじゃないの。毎晩遅くまでゲームしてるから目が赤いのよ」 「あと1日だったのに……ああ……」  祖母はマリンを抱きしめ涙を流した。いつも白髪なのに今日は赤いね。染めたの? 似合うよ。と無邪気に話すマリンを祖母は一層強く抱きしめた。
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