赤い月夜

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「ちょっと、何処連れてくのよ!」 「紅竜様のところだ」 「そんなの迷信でしょ? マリン帰るよ! こんな古臭い村になんて2度と帰ってなんか来ない!」  マリンは祖父に抱えられ連れて行かれようとしていた。それを引き留めようとする母親は村の男衆に押さえ込まれた。 「ちょっと、マリンを何処に連れてくってのよ! 返してよ! 私の娘よ!」  母親の叫び声を聞きながらマリンはただ震えていた。いつもは優しい祖父が厳しい顔をしている。そして街灯もない暗い夜道を黙々と進んでいく。その先にあったのは古ぼけた神社だった。 「海……お前は紅竜様に選ばれたんだ。とても名誉な事なんだぞ」 「龍? ゲームなの?」 「ゲームなら……良かったのにな」  祖父は神社の神殿の中にマリンをおろした。そしてマリン1人を残し神殿を後にした。ガチャガチャと音がした。きっと鍵を掛けたのだろう。  真っ暗な神殿の中に取り残され、マリンはただただ震えていた。何故自分がこんな所に置き去りにされなければいけないのか。ご飯は? トイレは? 保育園は? ママは? 「ごめんなさい、これからはゲームしないで早く寝るから。だから家に帰しでよ。いい子になるからーー!」  扉を叩きながらマリンは泣き叫んだ。自分が悪い子だから閉じ込められたのだと思った。必死で扉を叩き謝ったが扉は開かない。誰も助けに来てくれない。  疲れてお腹が空いたマリンは床に崩れ落ちた。 「ママ、ごめんなさい……」
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