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神殿はダンジョンの入口
マリンの目からポロリと涙が溢れた時だった。床板が動いたかと思ったら、男の子が顔を出した。
「お腹空いただろ?」
男の子はおにぎりを差し出した。
「うん!」
男の子の手からおにぎりをもぎ取りマリンはあっという間に食べきった。
「そこから出られるの?」
マリンは男の子が出てきた床を見た。
「うん。ここは秘密の抜け道なんだ。僕も良くオヤジに閉じ込められるんだ」
「夜遅くまでゲームをしてるから?」
「違うよ。勉強しないと怒られるんだ」
「ふうん」
勉強という事は小学生なのだろうか。でも年も近そうな男の子の出現にマリンは安心感を覚えた。
「私何で連れてこられちゃったの?」
「君はこの村の人間じゃないから知らないんだね」
男の子はマリンにも分かるように説明してくれた。
この村はかつては漁村だった。いつも大漁だった。それはこの村の守り神が龍だからだ。毎年盛大にお祭りをし、龍に感謝を捧げた。
しかし時代とともに若者は町に出てしまい漁をする者は少なくなっていった。
「毎年お祭りには”アカメ”っていう魚を紅竜様に奉納するんだけど、年寄りの漁師じゃ中々釣り上げられなくてさ」
「アカメって大きいの?」
「うん。1メーター以上あるんだ」
「私と同じくらいじゃない!」
「重さは君より重たいよ」
「えー!」
これまでも不漁の年や、お祭りの頃に台風が来て漁ができない年もあった。そんな年はアカメを奉納する事はできない。
「アカメを奉納できない年、村に異変が起きるんだ。まだ6歳にならない女の子の目が赤くなる」
「私みたいに?」
「うん。ちょうどアカメと同じくらいの大きさの子だよ。アカメって名前の通り目が赤いんだ。だからその女の子を、アカメの代わりに紅竜様に奉納するんだ」
「奉納って……それ、人身御供って言うんだよ!」
自分が生け贄にされたと知りマリンの体は小刻みに震えた。
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