神殿はダンジョンの入口

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「あれ取ろうよ」 「危ないよ」  突風は渦を巻き吹いたり吸い込んだりを繰り返してした。しかしマリンはそこに規則性を見出した。 「吹く、吸う……吹く、吸う。うん、体操の時の深呼吸と同じリズムだ。それに合わせて近付けば石をゲットできるはず!」  2人は風の吹く時は壁にへばり付き、吸い込む時に進むを繰り返した。そしてとうとう石のはめ込まれている壁面へと到達した。 「クッ……取れない」  石は壁面に食い込んでいた。強風で食い込んでしまったようだ。 「じゃあこの剣で周りの岩を砕こう」  太郎が剣で石の周りの岩を叩いた。少しずつ岩は砕け石がグラグラしてきた。 「もう少しよ!」 「よし!」  太郎は力を振り絞り岩をガンと叩いた。すると石はポロリと壁面から転げ落ちた。 「ヤッター!」  マリンは石を拾い上げた。マリンの手にちょうど収まるくらいの大きさだった。埋もれている時は分からなかったが、まん丸で真っ赤な滑らかな石だった。 「タマサンゴみたい」 「タマサンゴ?」 「うん。おばあちゃんの家の庭にある植物よ。冬になる頃に赤い実をつけるの」 「へえ、知らなかった」 「ここから出られたら一緒におばちゃんの家に行こうよ。見せてあげる」 「うん」  マリンは左手でしっかりと石を握りしめ、右手で太郎と手を繋いだ。太郎は剣を地面に突き刺しながら、風に逆らいつつ元の場所へと向かった。剣の先がボロボロになった頃、元の風の吹かない場所へと戻ることができた。
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