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「どうしよう。ねえ、出口知ってるんでしょ? どこへ行けばいいの?」
マリンは太郎に詰め寄った。
「うん……ここはもう僕の知ってる場所じゃない。迷ったみたいだ」
「ええーー!」
マリンは呆然と池を見た。水の色は黄色だった。なんとなく酸っぱい匂いが漂ってくる。車に酔って込み上げてきた時の、嫌な感覚が蘇ってきた。
「う……気持ち悪い」
「大丈夫?」
うずくまるマリンを心配して太郎は剣を投げ捨てマリンの肩に手を乗せた。その時だった。
ゴボゴボ……
池から嫌な音が聞こえてきた。見ると太郎が投げた剣が池に浮いていた。ゴボゴボと音を立てながら、少しずつ、少しずつ、溶けていった。そしてとうとう剣は溶けてなくなった。
「と、溶けたー! ヤバイヤバイ、この池に入ったら溶けちゃう! もう帰れないんだ、ここで死んじゃうんだ。ヤダー! 助けてー! ママーー!」
パニックをおこし泣き叫ぶマリンの横で太郎は考えていた。何か方法はないだろうか。ここから脱出できる手段はないだろかと。
「物を溶かすって事は、この池は酸性なんだろう。だからアルカリ性の物を入れて中和させればいいんだ」
「何いってんの? わけ分かんない!」
「アルカリ性……重曹かな。あとは梅干しとか」
「そんなのここにあるわけないじゃん!」
ふと、手にある石を思い出した。手を開くと真っ赤な石があった。梅干しに見えない事もない。試しにとマリンは石を舐めてみた。しかし酸っぱくない。何の味もしなかって。
「やっぱりただの石だ。これじゃあ何の役にも立たないよ……」
マリンは涙を浮かべ地面に座り込んだ。もう家には帰れない。ママにも会えない。この薄暗くてジメジメした場所で死ぬしかないのだ。
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