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アドレス交換
《今日》の私は一体どうしたんだろう。
トイレの鏡の前で真っ赤になった自分の顔を見つめて舞は自問自答する。
両手で頬を包み込むと本当に燃えているかのように熱い。
あんなに聡のことを意識してしまったのは初めての経験だった。
ただ呼び止められてお礼を言われただけ。
告白されたわけでも、手を握られたわけでもないのに。
「なにしてんの。しっかりしなきゃ!」
鏡の中の自分へ叱責して、舞は気持ちを切り替えたのだった。
☆☆☆
1日の仕事が終わって職員用の出入り口から外へ出る。
外はすでに暗くなり始めていて病室のあちこちから光が漏れて出ている。
「長谷川さん!」
呼び止められて舞は振り向いた。
そこには白衣姿で息を切らした聡が立っている。
舞の心臓は一気に早鐘を打ち始める。
次になにが起こるかすでに知っているのにドキドキするのはどうしてだろう。
「なにか?」
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