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できるだけ抑揚のない声で答える。
聡の顔を直視することができなくて、白衣のネームへ視線を向ける。
「あの、俺……」
聡はそう言ってから周囲に誰もいないことを確認した。
そして仕切り直すように咳払いをする。
「俺、長谷川さんのことが好きなんだ!」
まるで学生の告白みたいな、勢いに任せた言い方だった。
一瞬だけみた聡の顔は耳まで真っ赤になっている。
普段からあれだけモテているのに、告白することには慣れていないみたいだ。
「私……えっと……」
しどろもどろになって口の中でもごもごと言葉を探す。
そうしながらも舞の足は後ずさりをしていた。
こういうときどうすればいいかわからなくて、《今日》もまた逃げ腰だ。
でも、《今日》は少し違った。
「もしよかったら、アドレス交換しない?」
聡の言葉に舞はハッと息を呑んで顔を上げた。
聡はまるで少年のように笑みを浮かべている。
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