理由

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その日、その場所はまさしく彩がふたりを目撃したところだったからだ。 ふたりは誰もいない講義室で隣り合って座り、なにやらささやきあっている、ように見えた。 そのときに知明の目が見たこともないくらい輝いていたのは事実だ。 「覗いたけど?」 ムッと目を吊り上げてチカゲを見つめる。 これは本当に戦闘態勢に入ったほうがいいかもしれない。 チカゲは知明へ振り返ると「ほらね」と短く言った。 知明は大きな体を無理やり小さくしようとかなりの猫背になっている。 自分になにか思い当たるフシがあるときには、なぜかこうして小さくなってしまうのだ。 今回も、大いに思い当たるところがあるんだろう。 知明はさっきから彩と視線を合わそうともしない。 「誰かに見られてる感じはしたんだよね。まさか彩だとは思ってなかったけど」 チカゲは悪びれる様子もなく告げる。
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