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1度目の6月12日も、2度目の6月12日も、自分がヒートアップしたせいで知明とはろくに会話もできなかった。
今回は3度目の正直だ。
感情的にならずにちゃんと向き合わないといけない。
そう思うと少し怖いけれど、これは避けては通れない試練だった。
「さっきの会話でわかってると思うけど、チカゲとふたりで会ってたよね?」
知明はコクンと頷く。
「誰もいない講義室で、なにしてたの?」
その質問に知明は明らかに動揺を見せた。
視線が泳いて何度も居住まいを正す。
「怒らないから、素直に言って?」
子供に接するように優しく言うと、ようやく知明は彩と視線を合わせた。
「き、今日は彩ちゃんの誕生日だから」
知明はそう言うとポケットからくしゃくしゃになった袋を取り出した。
それは可愛い包装紙でくるまれている。
差し出されたそれを彩は受け取った。
「見てもいい?」
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