理由

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ふと思いついたことをそのまま聞いてみたけれど、知明は左右に首を振った。 「いや、それは俺がひとりで選んだんだよ。彩ちゃんに似合うと思って」 それは嬉しかったけれど、それならどうしてチカゲとふたりきりで親密そうにしてたのかの謎が残る。 「実はその……もうひとつ渡したいものがあって」 しどろもどろになりながら再びポケットに手を突っ込む。 取り出したのは手紙だった。 「彩ちゃんが約束場所に来なくて、慌ててここまで来たからしわくちゃになっちゃったけど」 本当ならシワにならないように最新の注意を払っていたのだろう。 それは知明から手紙だった。 《Dear 彩ちゃん 彩ちゃん、付き合い初めて今日で半年になるね。 そんな素敵な記念日が彩ちゃんの誕生日でとても嬉しいと想ってる》 そうやって始まった手紙は随所に歯の浮くような言葉が書かれている。
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