4度目の朝

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ほのぼのしていて、写真の中からゆったりとした空気が流れ出てきているみたいだ。 それを見た由佳は一瞬眉を寄せた。 写真の中の達也はどう見ても今の達也と変わらない姿をしている。 つまり大人になっているのだ。 『もしかしてまだ生きてるの?』 そうきくと達也は目を丸くして『当たり前でしょう? 俺のおばあちゃんが死んだなんて、不吉なこと言わないでよ』と、顔をしかめた。 さっきの話の流れからてっきり亡くなったのだと思いこんでいた。 達也の祖母はまだ健在だそうだ。 『今の内にしっかり仕事して、それでおばあちゃんが寝たきりになったらちゃんと介護できるようになるんだ』 達也の目標はそこにあった。 だから一生懸命仕事をするのだと、誇らしげに言っていた。 達也にとっては介護職は間違いなく自分へのチャレンジだったんだろう。 それに比べれば由佳は安全そうな方へ流されただけだった。
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