9人が本棚に入れています
本棚に追加
/81ページ
波はとてもおだやかで心地よいさざなみの音が鼓膜を刺激する。
風はおだやかで夜景は綺麗で、これ以上ないシチュエーションが《今日》もまたそこにあった。
達也がここをプロポーズの場所に選んだのも納得だ。
ふたりで並んで散歩をして、そして達也が不意に立ち止まり振り向いた。
その顔には緊張感が張り付いている。
それでも由佳はもう緊張しなかった。
さすがに4度目となると最初のときめきは消え去ってしまった。
達也は砂浜に片膝をついて箱に入った婚約指輪を差し出した。
まるで星のように輝いて見えいたダイヤモンドも、今はこんなものかという印象。
達也が一生懸命選んでくれたものなのに、その感動は本来の半分にも満たなかった。
由佳の胸には不満が大きく膨らんでいく。
何度も何度もプロポーズを受けて、その数だけOKして、それなのに全然前に進むことができない。
この毎日に一体なんの意味があるの?
最初のコメントを投稿しよう!