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それが涙となって溢れ出るまでそう時間はかからない。
ブワッと湧き出してきた涙を止めようとキツク目を閉じた時、ノック音が聞こえてきてベッドから飛び起きた。
「なぁに?」
できるだけ明るい声で返事をすると、母親が顔をだした。
「由佳、あんた今日なにかあったんじゃないの?」
リビングに顔を出さなかったことで余計な心配をかけたみたいだ。
由佳は慌てて笑顔になって「別に、いつも通りだよ」と答える。
でもその声は震えてしまって変になった。
それを母親が見逃してくれるはずもない。
勝手に部屋に入り込んできた母親はベッドの端に腰をおろした。
「達也くんと喧嘩でもした?」
手を握られてそう質問されると、我慢していた涙がまた溢れてくる。
25にもなって泣くなんて情けないと思いながらも止められない。
「プロポーズされた。でも、断ってきた」
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