第1話 舞の場合

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聡の声に心臓がドクンッと跳ねる。 聡のことを意識したことは今までなかったはずなのに、告白を受けてから妙に気になりだしてしまった。 それでも、今日の5月15日はまだ告白されていない。 シャンとしなきゃ! そう思って背筋を伸ばし、診察室Aのドアを開いた。 聡は患者さんのカルテを確認していて、舞が入っていくと顔を上げた。 大きくてクリクリした目が舞を見た瞬間に細められる。 「長谷川さん」 「看護師長からこれを」 舞はすぐに要件を済ませようと、書類を聡へ手渡した。 「あぁ、わざわざありがとう。俺から取りに行ったのに」 「先生の手をわずらわせるわけにはいきませんから」 わざとらしいくらい事務的な声でそう告げて、すぐに診察室を出ようとする。 すると後ろから「ありがとう!」と声をかけられて、舞の足が止まってしまった。
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