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「先に由佳の本音を聞くことができてよかったよ」
やっぱり、振られるんだ……。
そう思って覚悟を決めたときだった。
達也が砂浜に片膝をついた。
そしてポケットから指輪を取り出す。
「そうやって本音を言ってくれるなら、俺も安心です。由佳、俺と結婚してください」
大きな波が押し寄せて、そして帰っていく。
由佳の鼓動は高鳴り、涙がこみ上げてきた。
熱い涙のせいで視界がボヤけてくる。
言いたいだけ言ったのに、プロポーズされる前からマリッジブルーになっていたのに、達也は考えを変えなかったのだ。
由佳は震える両手で自分の口元を抑えた。
「答えを聞かせてくれる?」
達也の質問に由佳は大きく頷いて「よろしくお願いします」と、答えたのだった。
☆☆☆
同じ7月1日に5度のプロポーズを受けるという奇妙な経験をした由佳は、左手薬指に指輪の感触を感じながら眠りについた。
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