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再び視線を向けた先で、志麻くんと思いきり目が合ってしまう。もしかして今の会話が聞こえていたのだろうか?
さすがに距離があるし、教室内は賑わっているからそれはないだろうと思っていても、志麻くんがおもむろに立ち上がってこちらにやってきたことで全身から一気に冷や汗が噴き出す。
「俺の話してた?」
「し、してない……!」
「藤岡くん、聞き耳立ててた?」
「いや。千綿のこと見てたから」
「!!??」
思いがけない返答に見上げた先の志麻くんは、少し長めの前髪の隙間から覗く瞳がやたらと甘い。
「今日も美味そうに食ってるなと思って」
「えっ……ああ、これ?」
どうやら、私がサンドイッチを食べている姿を見られていたらしい。
会話が聞こえていたわけではないことに安堵するものの、志麻くんはじっと私の手元を見つめている。
食べたいのかな、なんて思う間もなく視界に影が落ちたかと思うと、吐息がかかるほどの至近距離に志麻くんの顔があって呼吸が止まる。
尖り気味の八重歯が見えた直後、半分ほどあったサンドイッチはさらに形を小さくしていた。
「ん……やっぱ美味い、ごちそうさま」
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