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「先生はこれから職員会議だから無理だって」
純部先生の周りにわらわらと集まったクラスメイトたちは、早速袋を開封して個包装の中身を教卓の上に広げていく。
そちらよりも先生に用事があるらしい早川さんグループは、腕を引いて純部先生を教室の後ろへと誘導していた。
ずれた眼鏡の位置を直しながらダメだと言っている先生も、あの様子では時間ギリギリまで手伝ってくれるのだろう。高校生活最後の担任が、純部先生で良かったと思っている生徒は多いはずだ。
「千綿」
「あっ、ごめん。それじゃあ行こっか」
騒ぎの方に気を取られてしまっていた私は、志麻くんに名前を呼ばれて意識をこちらに引き戻す。
待たせていた志麻くんの後に続くと、彼と共に教室を出てコンビニへと向かうことにした。
「そういえば、志麻くんも前は眼鏡かけてたよね」
髪形こそ大きくは変わっていないものの、私が出会ったばかりの入学時の志麻くんは今とは少し違っていた。
分厚い眼鏡をかけていて、初対面では近寄りがたいオーラを放っていたのを覚えている。
「……千綿は、前髪ぱっつんじゃなかったよな」
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