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動揺して離れようとする私を抑え込むように、志麻くんの腕に力が篭ったのがわかる。
あまりにも急激に縮まった距離に私の頭はショートしかけていて、なんだかいい匂いがするな、なんて場違いなことを考えていた。
そんな私のすぐ後ろを、チリンチリン、とベルを鳴らしながら一台の自転車が通り過ぎていく。
「……悪い、ぶつかりそうだったから」
「あ、自転車……ありがと……」
自転車を見送った志麻くんは、拍子抜けするほどあっさりと私の身体を解放する。
このまま傍にいたら心臓の音が聞こえてしまうんじゃないかと思えて、それからは彼の少し後ろをついて歩くような形になってしまった。
学校からそれほど離れていないコンビニなのに、到着までの時間はやけに長かったように思える。
「それじゃ、サクッと済ませちゃおっか」
「ん、それ持つ」
「あ……ありがとう」
店内には数名の買い物客がいるけれど、混雑しているというほどではない。
入り口にあるカゴを手に取って買い物を始めようとした時、自然な動きで志麻くんが私の手からカゴを取り上げてしまった。
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