02:大好きな彼

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(志麻くんて、こういうの自然にやるんだよなあ)  スマホのメモを確認している彼の横顔を一瞥してから、商品棚の方へ移動する。  リストにある商品を志麻くんが読み上げて、それを私がカゴに入れていく。そうしていると、必要なものはあっという間に揃えることができた。 「うん、オッケーかな。それじゃあ……って、志麻くん?」  買い漏らしが無いかどうかを確認して、私はレジに向かおうとする。  けれど、カゴを手にしたままの志麻くんはなぜか、スイーツコーナーの前で立ち止まっていた。 「どうかした?」 「……これ、千綿に似てる」 「え……?」  彼がなにを言い出したのかわからなくて、首を傾げながら隣へ移動してみる。  志麻くんが指差した先にあったのは、小さなプラスチック容器に入ったパンダの形をした和菓子だった。  小さくて丸っこくて可愛らしい。可愛らしい……のだけど。 「……似てないよ」 「似てるだろ。この訴えかけるみたいに見上げてくる感じとか」 「からかってるでしょ」 「うん」 「もー、志麻くん……!」
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