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03:彼の距離感
「……? 誰だっけ」
近づいてくる女子二人は、一緒にいる私のことなんて視界に入っていないみたいに、志麻くんを囲んでしまう。
タレ目でゆるくウェーブした栗色の髪の方が水田さん、気の強そうなショートヘアの方が谷口さんだったと思う。
きっと意識的にやっている水田さんの上目遣いは、同性の私から見てもきゅんとしてしまう可愛らしさだ。
「B組の水田晴菜と谷口綾だよ~」
「藤岡くん買い物? 何買ったの?」
「クラスの買い出し」
「そっか、A組はお化け屋敷だっけ? わたし藤岡くんに驚かせてほし~」
「俺はお化け役じゃないから無理」
買い物袋へと手を伸ばして中身を見る谷口さんに、なんとなくモヤモヤとした気持ちになる。
志麻くん個人の買い物じゃないし、見られて困るものだって入っているわけがないんだけど。
「なーんだ、ザンネーン」
「あ、けどさ、藤岡くんだって自由時間はあるでしょ?」
「ああ」
「あっ! じゃあさ、学園祭私たちと回ろーよ!」
「うんうん、そうしよ!?」
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