03:彼の距離感

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 入学当時から何かと関わる機会が多かったから、なんとなく気を許してくれているように思えるのだけど。それはひとえに、志麻くんが優しいから勘違いをしてしまうのだ。 「学園祭って思ってるよりあっという間だから、無計画だと全然回りきれなかったりするんだよね」 「ああ、それは確かにそうだな」 「去年とかは私も、たこ焼き食べ損ねたりしてたし」 「知ってる」 「え、なんで知ってるの!?」 「完売の張り紙見て泣きそうになってんの見た」  去年の学園祭はお世話になった先輩とおしゃべりしたり、眞白や仲のいい女子グループとワイワイしていて、気づいたら後夜祭になっていた。  だから、志麻くんと話す機会もあまり無かったんだけど。まさか見られていたなんて。 「恥ずかし……声掛けてくれたら良かったのに!」 「千綿の分までたこ焼き食っといたって?」 「えっ!? 志麻くんは食べられたの!?」 「チーズ入りのやつ美味かった」 「なにそれズルい!」  志麻くんにそんな姿を見られていたなんて、ものすごく恥ずかしい。だけど、私を見つけてくれていたことが嬉しいとも思う。
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