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彼が嘘をついているような素振りはない。水田さんたちの急なお誘いに対して、すんなり諦めさせるための手段だったらしい。
ということは、志麻くんが学園祭の自由時間を一緒に過ごす相手は、まだいないということになるのだろうか?
「そっか、嘘……だったんだ」
思いがけず私にもチャンスが巡ってきたのかもしれない。
水田さんたちと同じように断られてしまう可能性もあるけれど、最初からゼロよりは1%でもある可能性に縋れるならその方がずっといい。
このまま教室に戻れば、また誰かが志麻くんに声を掛けることもあるだろう。
「志麻く……」
「……千綿は?」
「へっ!?」
誘うのならば今しかない。そう思って勇気を振り絞ろうとした私は、急な問い掛けに開いた口から情けない声を出してしまう。
そんな私の反応をからかうわけでもなく、志麻くんはじっとこちらを見つめていた。
考えの読めないその瞳に、心拍数が上昇していくのがわかる。
「学園祭の自由時間って、なんか予定ある?」
「予定……?」
「誰かと約束してるとか」
「いや、特にしてないけど」
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