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空腹感は限界を迎えていて、今すぐにでも食べ物をお腹に入れたい。けれど、お昼時の出店なんて長蛇の列が容易に想像できてしまう。
とりあえず、志麻くんと相談して行き先を考えよう。そう思った私は、彼の姿がどこにも見当たらないことに気がついた。
「あれ……志麻くん……?」
志麻くんも私と同じ午前中の当番なので、さっきまで列整理をしたり、お化け屋敷を出入りしていたはずだ。
一緒に学園祭を回る約束もしていたのだから、どこにも行くわけがないのに。
(もしかして、誰かに声を掛けられて……?)
ふと過ぎる可能性を振り払おうと、私は頭を振る。
誰かに誘われたとしても、志麻くんは先約を何も言わずに破るような人ではない。少なくとも、そちらを優先したいなら私に断りを入れてくれるだろう。
(でも、他に優先したい用事があるって言われたら……私はどうするのかな)
それが志麻くんの意思なら、仕方ないと諦めるのだろうか?
知らず知らず沈んでしまいそうになる気持ちを、どうにか奮い立たせようと顔を上げた時だった。
「……たこ焼き?」
私の目の前には、どういうわけだかたこ焼きの姿があった。
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