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空腹のあまり幻覚が見えているのだろうか?
それにしても美味しそうな8個入りのたこ焼きは、おそらく焼きたてなのだろう。
ほかほかと湯気を立たせて、香ばしいソースの匂いまでがリアルに鼻孔を擽ってくる。
たっぷりとかけられた鰹節が私を誘惑するみたいに踊っていて、青のりとのコントラストが天才的だと言わざるを得ない。
「ふ……いつまで見つめ合ってんの」
「へ?」
笑みを含んだ声に現実へと引き戻された私は、そこに志麻くんが立っていることに気がつく。
たこ焼きがひとりでに現れたのではない、彼が私の目の前にたこ焼きを差し出していたのだ。
「冷める前に座れる場所探すぞ」
「う、うん……?」
笑いながら廊下を進み始める彼の後を慌てて追いかけていく。
よく見れば志麻くんは、たこ焼き以外にも何かが入ったビニール袋を腕に提げている。
「もしかして、買いに行ってくれたの?」
「絶対混むし、腹減る時間だし。村田に頼んでちょっと早めに抜けさせてもらった」
長蛇の列ができるであろう状況を見越して、お昼ご飯を買いに行ってくれていたらしい。
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