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05:彼が死ぬ日
「森下たちの演奏、スゲー良かったな」
「うん! 私、バンドとか音楽のことって全然わからないんだけど、すごく楽しかった!」
空き教室で昼食を済ませた私たちは、志麻くんの友達が組んでいるというバンドのステージを観に行っていた。
楽器の派手な演奏と歌声を響かせる体育館の中は、合唱コンクールの発表なんかとは全然違う。
その空間は、私にとって体験したことのない未知の世界だった。
気後れしてしまうかとも思ったのだけど、そんなことは全然なくて、大きな声でコールアンドレスポンスというやつまでしてしまったほどだ。
「次はどうする?」
「うーん、そうだな……演劇が気になってるけど、出店もまだ見て回りたいし……」
「誰か撮ってるとは思うけど、やっぱ生で観たいよな」
「そうそう」
「し~ま~!」
「「ん?」」
続く予定を考えている時、名前を呼ばれて私と志麻くんは同時にそちらを振り向く。
そこにいたのはB組の栗林くんで、――去年は同じクラスだったから顔と名前を憶えていた――私たちの反応に驚いた様子で動きを止めていた。
「あ……悪い、えっと、しましまチャンの方」
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