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「千綿が幸せそうに食べてるトコ、見てるとこっちも幸せになる」
彼は背が高いから、横並びになると志麻くんの顔はあまりよく見えなくなってしまう。
けれど、少しだけ私の方に傾けられたその表情は、普段は不愛想だと言われているものと同じだとは思えないくらいに柔らかくて。
私は志麻くんに嫌いになってもらわなきゃいけないのに、私のことを好きでいてほしいなんて思ってしまう。
「ゴミ、貸して」
「え? あ……ありがとう」
そんなことを考えているうちに、私たちはゴミ捨て場に到着していた。
自分の手にしていたゴミを指定の場所に置いた志麻くんは、私に向けて手を差し出している。袋を手渡そうとした私の指先に、志麻くんの指が触れた。
「そ、それじゃあ私は戻るね……!」
窓越しに廊下を駆け抜ける生徒たちの姿が見える。校庭の方へ向かおうとしているらしい彼らの目的は考えるまでもない、後夜祭が始まっているのだ。
早くこの場を離れて、私もみんなの中に紛れてしまおう。
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