00:プロローグ

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 そんな考えを見透かすみたいに、志麻くんが私の腕を掴む。長めの黒い前髪の奥に見え隠れする瞳が、いつも以上にまっすぐ私の姿を捉えているのが見えた。 「……千綿、ちょっとだけ。来て」 「志麻く……待って、私……!」 「すぐ済むから」  問答無用で私の腕を引いて歩く志麻くんは、解放してくれる気はないらしい。  きっと本気を出せば振り払うことはできるのに、そうしないのは、ちゃんと嫌われる勇気が無いからなのかもしれない。  だって私は、志麻くんのことが大好きなのだから。 「志麻くん、あのね、私……」 「待って、俺が先」  志麻くんが足を止めたのは裏門のすぐそば。生徒たちはみんな校庭の方にいるのだろう、後夜祭に参加しない生徒が一人通り過ぎていく。  その生徒が裏門を抜けていったのを確認してから、志麻くんが口を開いた。 「俺は千綿が好きだ」  止めることもできず、彼に向けられた好意が鮮明な音になって私の耳に届く。  大好きな人が私のことを好きだと言ってくれた。
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