00:プロローグ

6/7

27人が本棚に入れています
本棚に追加
/197ページ
 後夜祭で告白すると幸せになれると言うジンクス。それが事実かどうかは重要ではなくて、そんなシチュエーションを選んでくれたことへの喜び。  幸せな瞬間を噛みしめる間もなく、私の視界から志麻くんが消えた。  ドン、という鈍い音。同時に何かが折れるような耳障りな音。頬にかかる生温かい感触。 「きゃああああああああっ!!!??」  甲高い悲鳴が聞こえて、裏門の外を歩いていた男性が慌てた様子で駆け寄ってくる。  荷台に木材を乗せた大きなトラックが、校舎の壁にめり込むような形で止まっていた。その車体と壁の間から覗いているのは、私の腕を握っていた志麻くんの手だ。 「警察……ッ、救急車……!!?」 「早く車を動かせ!!」 「もう無理だよ、あれは……」 「きみ、大丈夫か!?」  騒ぎを聞きつけた人々が、校舎裏に続々と集まってくる。私はただ呆然とその光景を眺めていた。  酸素のない透明なカプセルに閉じ込められたみたいに、音が遠くに聞こえる。息が苦しい。視界が徐々に不鮮明になっていく。  目を開けていられなくなって、重力に従い瞼を下ろしていく。
/197ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加