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後夜祭で告白すると幸せになれると言うジンクス。それが事実かどうかは重要ではなくて、そんなシチュエーションを選んでくれたことへの喜び。
幸せな瞬間を噛みしめる間もなく、私の視界から志麻くんが消えた。
ドン、という鈍い音。同時に何かが折れるような耳障りな音。頬にかかる生温かい感触。
「きゃああああああああっ!!!??」
甲高い悲鳴が聞こえて、裏門の外を歩いていた男性が慌てた様子で駆け寄ってくる。
荷台に木材を乗せた大きなトラックが、校舎の壁にめり込むような形で止まっていた。その車体と壁の間から覗いているのは、私の腕を握っていた志麻くんの手だ。
「警察……ッ、救急車……!!?」
「早く車を動かせ!!」
「もう無理だよ、あれは……」
「きみ、大丈夫か!?」
騒ぎを聞きつけた人々が、校舎裏に続々と集まってくる。私はただ呆然とその光景を眺めていた。
酸素のない透明なカプセルに閉じ込められたみたいに、音が遠くに聞こえる。息が苦しい。視界が徐々に不鮮明になっていく。
目を開けていられなくなって、重力に従い瞼を下ろしていく。
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