口籠る秘書

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口籠る秘書

‥‥‥社長の声が少し大きくなる。‥‥‥ そりゃあ私は未婚だがな。私が探しているのは 恋人でも妻でもないんだ。 そこをはっきりさせてくれたまえ。 君も、有能な秘書ならそのくらい察して欲しいものだがね。 いやいや、愛人などもっと不要だ。性欲のはけ口が必要なわけじゃない。 社員として雇用契約を結ぶんだぞ。 私の出した希望は、そんなに難しいかね? いいか?今回の依頼に至る理由はこうだ。 私は若い頃からの夢を叶え事業を成功させた。 ありとあらゆる人材を集め、適材適所に配属し 個々の可能性を引き出し、それを生かして経営を成功させた。 癖のある人物ほど、味方に付けて成長させれば能力を発揮するものだ。 君には、才能はあるが性格に難のある研究員を何人もスカウトしてもらったな。 彼らはすっかり我が社になくてはならない主要な研究員に育ってくれた。 他にも、私が出した希望に沿う人物のスカウトを何人も成功してきた君じゃないか。 業績は安定している。来期には私は会長職になる予定だ。現場からは少しずつ距離をとろうと思っている。そうなれば、有り余る時間を持て余すようになるだろう。 そこで私は考えた。公私共に私の秘書となる人物が必要だ、とね。 君は秘書としてこれまでになく優秀だ。その君の後を引き継ぎ、今後は仕事以外の予定管理などを主に任せていこうと思っている。 仕事上の管理よりプライベートな管理の方が多くなるだろうとは言ったが、その意味はだね、 我が社の業務内容についての知識量は求めてはいない、ということなんだ。 君は秘書として非常に優秀だ。私についている間に我が社の経営から人事、取引先との折衝や社員との交流に至るまで、全て私と共有し理解し協力してくれた。 が、今回探しているのは、プライベートとの両立、いっそプライベートを充実するために協力してくれるような人物なんだよ。 これまでにも難しい引き抜きを何度も成功させた君だ。今回も私の希望する人材発見よろしく頼むよ。
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