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あの顔だ。間違いない。
いつも帰りに通る交番。何とはなしに見た掲示板。
そこに貼り付けられていたポスターには、先ほどの女性の写真付きで、このような記載があった。
『指名手配犯』『罪状:連続殺人』と。
一瞬で血の気が引いた。
さきほど見た光景の一切合切が、走馬灯のようにフラッシュバックする。
『私のこと、知ってますか?』
あの質問は、俺が彼女を知っていたら殺すつもりだった?
終電も間際の夜に、わざわざ駅を探していたのは逃げるため?
幽霊の少女の凄惨な状態は……女性が作り出したもの?
僕はすぐさま交番に駆け込み、あの女性のことを話した。
もし、あのとき「知ってる気がする」と言ってしまっていたら。美人であることに色目をつけて「駅まで案内しましょうか」と言ってしまっていたら。
俺は今でも、恐ろしくてたまらない。
怖いのは幽霊だけではない。
むしろ、この世でもっとも恐ろしいのは人間なのかもしれない。
そんなことを思う夜だった……。
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