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一章 見えない想いと見えない不安
《一平、おはよ。今日も一日、頑張ろうな》
《優太さん、おはようございます!今日は天気もいいので外勤日和ですね!お互い頑張りましょう!》
二人での特別な空間を皮切りに、俺たちはいけない恋人関係として、離れながらも楽しい日々を送り続けていた。
朝になれば『おはよう』から始まるけれど、終わりは『おやすみ』が言えない。夜には君が帰らなければいけない場所があるし、俺たちの関係は、決してバレてはいけないから。
それでも、その日の締めくくりは『おやすみ』が言えなくても『お疲れ様』と『また明日』をメールで交わせるだけで十分。君と繋がっていれるだけで十分だと感じていた。
《今日は会えるのか?》
《はい、外勤予定です!》
《なら、昼前にいつもの場所で》
《分かりました、会えるの楽しみにしてます!》
時間が合えば【いつもの場所】で待ち合わせをし、二人だけの時間を楽しむ。もちろん、身体を互いに求め合い、狭くも愛が詰まった空間で身体を混じり合わせることも初めて会った時から変わっていない。
「一平は、行けるとしたらどこに行きたい?」
「そうですねぇ…沖縄かな?」
「沖縄かぁ…!うん、俺も好きだ」
「行ったことあるんですかっ?」
「ああ、三回ぐらい。ぶっちゃけ、今すぐにでも行きたいぐらい好きかもしれねぇな?」
「分かるー!その気持ち!僕も沖縄大好きなんです!出来るなら何もかも放り出して、沖縄に行きたいぐらいですもん」
「ほほう…仕事どーすんだよ」
「沖縄に行ったら、仕事を軽めにしながら自給自足の生活なんか送れたら最高だなぁって!のんびり過ごしたいなぁって思って」
いつもの喫煙所でタバコを互いに吸いながら、他愛もない話をするこの空間も以前から何も変わっていない。むしろ、メールじゃ伝えきれないことや会えるまで溜まりに溜めこんだ話を互いに繰り広げられることに幸せを感じていた。
「いつか二人で行けるといいな、沖縄」
「今は叶わないかもしれないけれど…僕はいつか優太さんと行きたいです」
「お前がそう言ってくれると嬉しいよ」
「あっ!出来るならクロちゃんもですよ!?」
「ははっ!そうだな、置いていったら、ぜってぇ拗ねるからな?」
「ははっ!クロちゃんも家族ですからね?」
他愛もない話で笑い合えている俺たち。
いけない恋だとしても、俺たちは互いを愛し、笑いの絶えない、二人だけの空間を楽しむことが出来ていたんだ。
《最近の調子はどうだい?上手くいってる?》
《はい!おかげさまでしっかりと気持ちを交わし合うことが出来て、関係を続けています》
《そうかそうか、上手くいってて何より。でも、この先もきっと、どうしたらいいものかと困る時が必ずやってくる。まぁ、それはどんな恋愛にも言えるだろうけれどね?辛かったり困った時はいつでも相談に乗るからね?》
《はい!本当にいつもありがとうございます!》
そして、恋のキューピットでもある大輔さんとのやり取りも変わらず続けていた。
いけない恋の気持ちを共感し、色々とアドバイスをくれた大輔さん。そしてこれからもきっと俺の大きな支えになってくれる人なのだろうと心から信じられる人となっていた。
そんな信じられる人とはメールではなく、LINEで繋がり合い、メールよりも楽にやり取りを続けていたけれど、いつかは一平ともLINEで繋がり合えたらいいなと思っていたのは、俺だけの秘密だ。
何もかもが上手くいき、二人でいけない恋を育みながら時は経ち、気付けば君と付き合ってから三ヶ月の月日が経とうとしていた。
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