第二十二話 湧き上がる感情

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第二十二話 湧き上がる感情

 いつも通り、血の摂取を終えた刹那は夜道を歩いていた。 「あー……最悪な味だったな……」  刹那は血の味を思い出しながら、呆然と夜空を見上げる。  視界には、雲一つない幾つものの星が爛々(らんらん)と輝いていた。 「今日は星がよく見えるな……」  刹那はそんなことを思いながら、口直しとばかりにポケットから取り出した飴を口に含む。  りんごの味が口いっぱいに広がる。 「血の味は最悪だったが、あの恐怖に歪んだ顔は最高だったな」  刹那は今まで食殺か殴り合いで終わらせていたが、最近になって喧嘩相手を玩具(おもちゃ)のように(なぶ)ることが増えた。  戦意を失った喧嘩相手を痛めつけ、じわじわと死の恐怖に追い詰める。  これまでとは違う新しい快感に、刹那を堪らなく興奮させた。 「またやりてぇな……鬼ごっこ」  強者を屈服させる快感は理性を崩壊させ、周りが見えなくなってしまう。  刹那はその快感に酔ってしまい、前に言われた紫雨の忠告が頭から抜けてしまった。 「今度は何で遊ぶか……」  ドンッ!  次に狙うターゲットのことを考えた時、横から衝撃が走った。 「うおっ⁉︎」  唐突に襲った衝撃に、転びそうになった刹那は何とか体勢を立て直した。  視線を上げると、そこには暗闇に目立たないパーカーのフードを目深く被った人物がいた。
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