第二十二話 湧き上がる感情

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「……死んでいるのか?」  刹那は生死を確認しようと、少女に歩み寄る。  ――ドクン  脈を確認しようと、少女の首に触れた時、刹那の心臓が大きく跳ね上がった。  脳裏に首を血で真っ赤にした女性の映像が過り、目の前で倒れている少女と重なる。 「ハァ……ハァ……」  動悸(どうき)が激しくなり、刹那は言いようのない恐怖が込み上げてきた。  体にぶわっと汗が吹き出し、寒気が起きたかのように体が震える。 (くそっ……まただ。ホント……誰なんだよ)  刹那は胸を押さえ、呼吸を落ち着かせようと大きく深呼吸をする。  それを数回繰り返していると、「……うぅ」とくぐもった声が聞こえ、刹那はハッと顔を上げた。  少女の体がもぞりと動いた。 「……!」  ――生きている。  そう確信した途端、刹那の体を(まと)っていた恐怖が薄れ、震えも止まった。  徐々に落ち着きを取り戻すと、刹那は再び少女に視線を向ける。 「見た感じ致命傷じゃなさそうだな……」  でも、腹部の出血は止まっておらず、このまま放置してしまうと失血死するだろう。 「…………」  刹那の胸中(きょうちゅう)に言葉では表現できない感情が湧いてくる。 (気持ち悪ぃ……)  名前のわからない感情に頭がぐちゃぐちゃになる中、刹那は一つだけわかったことがあった。
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