第二十二話 湧き上がる感情

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(すげぇタイミングだな……こいつに任せれば解決だな)  刹那は声を掛けようと、ポニーテールの少女に近づく。  シュッ! 「っ……⁉︎」  口を開こうとした時、刹那の目の前に何かが振り下ろされ、体が反射的に後退する。  突然ポニーテールの少女が腰に掛けていた角材を引き抜き、刹那目掛けて振り下ろしたのだ。 (は、は? いきなり何だよ?)  ポニーテールの少女の攻撃に訳がわからずにいると、刹那はあることに気がついた。 (もしかして……オレが襲ったと思ってんのか?)  それなら攻撃してきたことに納得がいく。  気を失っている少女の服を()いで噛みついている光景を第三者から見れば、襲っているようにしか見えないだろう。 (あー……どうすっかな……)  異常に等しい光景を見たら、無実だと信用させるのは難しいだろう。  刹那はこの状況をどう対処しようか考えたその時だった。 「悲鳴が聞こえたのはこの辺ですか⁉︎」  遠くからいかにも警察の口調らしい声音が聞こえ、刹那はハッと顔を上げる。 (やべっ! サツだ!)  刹那は条件反射で体が動き、ポニーテールの少女を突き飛ばして逃げ去った。 「くそっ……今日はマジで何なんだよ!」  刹那が一歩ずつ駆け出す度、周囲に風が集束する。  路地裏を抜けると、刹那は旋風(せんぷう)に姿を変え、夜風に紛れて消えた。  そして、この小さなきっかけが因縁の始まりだと言うことに、刹那は気づいていなかった――。 【了】
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