今でも彼女に憧れている

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 「おはよう」と教室のドアを開ければ、「おはよう、美空(みく)」と私に声をかけてくれるクラスメイトがたくさんいる。  ここの中では自分は一人ではないのだと頭と細胞が満たされる。これで今日も一日ライフポイントは足りそうだ。  どんなクラスになっても、メンバーがシャッフルされても不思議なことに、女子たちが作り出すグループは似たような構成になる。私は幸運なのかクラスの中心側のグループに入れられた。  誰かと誰かがつきあっただの別れただの、そんな話がすぐ耳に入って来るようなグループだ。  でも、このグループの中で笑っている『橘美空(たちばなみく)』も、誰かの失恋に悲しんでいる『橘美空』も、どれも本当の『橘美空(わたし)』ではない。  偽りの笑顔だとか、悲しむフリをしているつもりはないけれど、このグループの中で本当に自分をさらけ出していることは、ない。  だって、私が本当にやりたいことなんてこのグループの中じゃ話したこともないから。 「美空、今日、みんなでカラオケ行くんだけど来る?」  野田陽葵(のだひまり)が声をかけてくれた。私は「あーごめん」と左目を閉じて謝る。 「今日、塾だからさ。また今度誘ってよ」   「マジかー、残念」  残念がられる分には嫌われてないのかな、そんなことを思いつつ、塾に着くまで一人でいられることにちょっと喜びを感じながら、私は教室を出た。
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