6.花は根に鳥は古巣に

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「下がっていてください、エイガー団長」  ハイトは、青鳥騎士団のものとは異なる銀の鎧を身に着けていた。腰に提げていた剣を抜き、両手に構える。  そこに三人目の騎士が斬りかかった。相手は体が大きく勢いもある。それでも、武闘大会で戦った火吹竜の精鋭とは雲泥の差があった。  振り下ろされた剣を、ハイトは自らの剣で受けた。そのままわずかに前に出たかと思うと、(ガード)を相手の刃に噛ませて跳ね上げる。騎士の剣は、その勢いとの原理で持ち主の手から弾き飛ばされた。 「なにっ」  (から)の手に視線が向かう騎士を、ハイトは迷いなく斬り倒した。  そのようすを、オーレンは座り込んでぽかんと見ていた。振り返ったハイトの鎧には、胸元に両翼を広げた鷲の紋章が描かれている。王家直属の情報部隊、(ぎん)(しゅう)騎士団の印だった。 「実家に戻された後、色々考えたんです」  ハイトはオーレンの矢傷を確認しながら説明した。 「青鳥の一員として戦場に出るのは、確かに無理があったかもしれないと思いました。それで別のやり方を試してみることにしたんです。青鳥で学んだ知恵ですね」 「それが、銀鷲」 「父や兄に相談して、一時的に使っていただくことになりました。主な仕事は連絡係ですが、ここに来られて良かった……。矢がこれ以上動かないように固定しますね。少し痛むと思いますが、我慢願います」  そう言って包帯を出す。オーレンはまだ混乱していたが、続く激痛に質問は霧散した。 「次は副団長ですね」  ハイトはスラアの傷も確認した。背中の重症に眉をひそめたが、呻き声を上げるスラアの腋の下に頭を突き入れ、肩に担ぐ。 「ハイト、大丈夫か? 私が担ごうか」 「せっかく止血したのにやめてください……。それより、早く戻りましょう。魔導士さまが傷を見てくださいます」 「魔導士? 王国の魔導士が、来ているのか」  ハイトはうなずくと、早くも山を下りはじめた。オーレンもふらつきながら後を追う。 「団長たちには数日違いで連絡が間に合いませんでしたが、今回は魔導士さまの方から接触があったのです。メドーが、自国の魔導士を非道に扱っているとおっしゃられて。大変お怒りのごようすでした」 「……ああ」  オーレンは、スラアが斬った少年のことを思い出した。あの場では斬るより他に無かったが、本来ならば戦場に出してはならないはずの若さだった。さらにあの扱いを見れば、彼が自由意志であの場にいたのではないことは明らかだ。王国の魔導士がどうしてそれを知ったのかはわからないが、魔導士たちには国境を越えた連帯感があるらしい。今回のことで、メドーは報いを受けるのだろう。いつか……あるいは近いうち、すぐにでも。
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