青ざめた恋の夢

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青ざめた恋の夢

今、私は喪服代わりに制服を着て、誠人くんのお通夜に参加している。 線香の匂いと、お坊さんの()(きょう)、焼香の列、すすり泣き、彼の笑顔写真。 ここに来るべき女じゃないのに、彼の友達に罵られても仕方ないのに、私は誰にも怒られず、責められず、もっと言えばこんな私を憐れむように、慰めるように、知らない人たちが一言二言かけてくれる。 誠人くんはよっぽど良い学生だったんだろう。良い友達にも恵まれていたんだろう。 彼がいなくなった今も、彼の周りには優しさが満ち溢れている。その優しさが濃ければ濃いほどに、私は身が凍る思いだった。 結局、誠人くんとは何も言葉を交わしていない。 確かに彼には触れたけど、それはとてつもない悲痛を私の中に残した。 美子さんの挨拶も、歯を噛みしめながら刻むように聞いた。 改めて、あの言葉が思い出される。 『褒めてあげてください。息子の強さを、勇気を、褒めてくだされば結構です』
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