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帰りの電車も満員で
あと三駅というあたりから
漸く座席が確保でき
電車の中で船を漕ぎ
四駅越えてはまた
四駅戻るのフォークダンス
家族と食事も共にできず
テレビが伽の一人鍋
ニュースにしても
同じ事で
場所、人、日付が違うだけで
とどのつまりは似たような事だ
注意欠如の自分には
トリプルタスクは過剰なようで
意識も虚の食卓で
営業日報にポン酢が飛び散り
滲んだ染みが広がって
慌ててティッシュでペタペタと
叩く努力はしてみたが
紙は薄茶色に濁ったままで
子供の頃から本棚にある
古手の童話の
紙の色を思い出して
あの頃からやり直せたら等と
無駄な夢想が頭を過ぎる
風呂などは面倒だから
入りたくはないのだけれど
入らぬわけにも行かぬので
体を洗って
浴槽には二分と居らぬ烏の行水
上がってすぐは寝付けないので
下戸がのんべの真似事をして
ノンアルビールで雰囲気晩酌
眠気はピークに違いないのに
目だけが爛々と冴えわたり
眠れないのに歯噛みして
古都散策の際
ノリで買ったカレンダーの
阿弥陀坐像の鼻の下に
油性ペンで髭を描き込み
神も仏もあるものかと
返す刀で奇声と共に
ペンを床に投げつける
─ 朝が来ませんように
そして気付けば
また同じ事を
繰り返し繰り返し
─ また ─
繰り返し繰り返し
さて物語は
同じ事が同じ様に
唯々繰り返されるだけと言う
─ 無間地獄 ─
恐ろしい程に何も起こらない
いや、何も起こらない事が
恐ろしいと言う
そう言う物語。
これからもずっと
永遠に何も起こらない
そう
── 死ぬまで
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