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自らを『死神』と名乗る
黒の紋付袴に革靴
黒髪でおカッパ頭
大人の顔をした
薄気味悪い子供
もう彼此一時間ほど前に
何度も何度も
電話を掛けてきた挙句
突如玄関内に立っていた
理由も告げずに
笑顔で家に上がってきて
隣の和室の襖越しに
私の口調と声色を以て
ブツブツ独り
独特のお経の様な
抑揚とリズムで
そんな私のあれこれを
私に向かって延々と
語り続けてくれるのだ
どうせ死んでも地獄だろうし
等と考えながら
手を合わせたのは
怖いからじゃなく
私には何だかその死神が
自分をこの無間地獄から
救い出してくれる
阿弥陀如来に見えたからだ
【死神 ─ 完】
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