死神

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********** 自らを『死神』と名乗る 黒の紋付袴(もんつきはかま)に革靴 黒髪でおカッパ頭 大人の顔をした 薄気味悪い子供 もう彼此一時間ほど前に 何度も何度も 電話を掛けてきた挙句 突如玄関内(げんかんうち)に立っていた 理由も告げずに 笑顔で家に上がってきて 隣の和室の襖越しに 私の口調と声色を(もっ)て ブツブツ独り 独特のお経の様な 抑揚とリズムで そんな私のあれこれを 私に向かって延々(えんえん)と 語り続けてくれるのだ どうせ死んでも地獄だろうし 等と考えながら 手を合わせたのは 怖いからじゃなく 私には何だかその死神が 自分をこの無間地獄(むけんじごく)から 救い出してくれる 阿弥陀如来に見えたからだ 【死神 ─ 完】
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