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朝の目覚まし
トーストの焼ける匂い
コーヒーの湯気
歯磨き粉は当たり前の様に
ミントの味がして
鏡に映る髪の毛はクシャクシャだ
服を考えるのは面倒で
取り敢えずは同じスタイルを
取り分けスーツとは便利なモノだ
改札を抜け
競うように階段を昇り
ホームに立つと必ず感じる
電車特有の
気の抜けたコーラのような
甘酸っぱい匂いは
どの部分の何の匂いか
運良く座れたとして
向かいに座る
リクルートスーツの若い女と
目が合う事が怖くて
宙を見つめるのに疲れ果て
寝てはいけないのに
目を瞑る
ハッと気づけば
見慣れたホームが車窓から見えた気がして
慌てて駆け降りたところが
何の勘違いか
二つ前の駅であったりして
恥ずかしくもあり
すごすごと隣の車両に戻る事になる
降車した先でも
人の流れは一定で
宛らベルトコンベアだ
何か事情でもあれば
少しは到着を遅らせられるのに
世の中は無駄に平和で
思っていたより五分も早く着く始末
錆びた手摺の外階段を
五階まで上がり
呪いか戒めのように
踊り場から遥か階下を眺めてみる
飛び降りるとして
その時の痛みや
その後の自分の有り様について
一通りの想像を
最後までし終えてから
それよりはマシかと
諦め溜息ついて
事務所の扉を開ける
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