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見渡す限り続く森。
どれだけ歩いても、どれだけ声を枯らして助けを呼んでも答えるモノは誰もいない。
この底知れぬ深い森に突然迷い込んでから、一体幾日が過ぎたのだろう。
草の根を齧り、夜露で喉を潤し……とまではいかなくても、まともに食べられるモノもないまま何日も彷徨い続けている私は、もうこのまま死ぬのかもしれない。
どこか他人事のようにそんなことを考えてしまう自分の思考に、誰よりも私自身が驚いている。
私は普通の大学生だったはずだ。
それが、アルバイトを終えて一人暮らしの安アパートに帰り、部屋のドアを開けたと思ったら突然こんな森の中にいた。
何が起きたのかわからずに混乱した私は、きっとこれは夢なんだろうという安易な結論に辿り着いた。
だって仕方ないでしょ?
こんな在り来りなラノベみたいなこと。
現実に自分の身に起きたなんて信じられる訳がない。
夢だと思ったからこそ、寝れば現実では目が覚めるんじゃないかと思って、特に何の警戒もしないで適当に地面の柔らかそうな場所で眠りについた。
だけど、目が覚めても私が自分の部屋に帰っていることはなく、こうして何日も過ぎてしまった。
今にして思えば、よく獣に襲われることもなく最初の夜を越せたと思う。
幸いなことに……いや、こんな状況になっていて幸いも何もないとは思うけど、今現在に至るまで、獣に襲われるようなことはない。
でも時折気配は感じるし、何も見えない闇の向こう側から鳴き声だけが聞こえてくることは頻繁にある。
今襲って来ないのは、私が力尽きて死ぬのを待っているからなのか。
それともに何か他に理由があるのかはわからないけど、道具一つ持っていない私が獣に襲われて無事でいられるとはとても思えない。
だからこそ、一刻も早くこの森から抜け出さないといけないと思ってるんだけど、どれだけ歩いても森から抜け出せない。
完全に遭難してしまっているのはわかるけど、今更どうしようもないし。
だから私は今宵も闇の中をひたすらに歩き続ける。
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